「君が好き」は2002年1月1日に発売されたMr.Childrenの22番目のシングルです。
2002年5月10日に発売した10番目のアルバム「IT’S A WONDERFUL WORLD」にも収録されています。
また、ドラマ「アンティーク∼西洋骨董洋菓子店∼」の挿入歌であり、2000年から2001年にかけて行われたアリーナツアー「Mr.Children Concert Tour Q 2000-2001」中に完成した曲としています。
君が好きの歌詞はこちら
Mr.Children「君が好き」の歌詞考察について
「君が好き」というシンプルな曲名とは裏腹に物凄く奥が深い曲です。
というのも、一見すると純愛のラブソングに聞こえるし実際にそう認識している人も多くいると思いますが、歌詞を深く考察していくと、実は不倫の曲なんです。
先に1番のサビの歌詞を紹介します。
君が好き
出展:君が好き/Mr.Children 作詞:桜井和寿
僕が生きるうえでこれ以上の意味はなくたっていい
夜の淵 アパートの脇
くたびれた自販機で二つ 缶コーヒーを買って
一番のサビですが、自分が生きる理由に”君が好き”という言葉以上の意味はいらないとしています。
ここだけ聞くと本当に素敵な純愛の歌に聞こえます。
実際に、「君が好き」を純愛のラブソングとして聞いている人も多いと思います。
ではなぜ「君が好き」が不倫の曲と言われるのか?
実際に歌詞の考察を行う中で説明していきますが、その前にこの曲を考察する上でキーとなる「月」について触れておきます。
「君が好き」のシングルのジャケットはビルの合間に月が浮かんでいる写真となっています。
また、曲中に「月」が出てきます。
この曲で出てくる「月」というのは単なる「月」ではありません。
「月が綺麗ですね」という言葉には、愛を告白する意味が込められていると言われているというのは聞いたことがあるという人も多いと思います。
夏目漱石が、英語の「I love you」を「愛している」ではなく、「月が綺麗ですね」と和訳したという話からきているそうです。
「君が好き」の曲中で出てくる「月」には、そういった「I love you/君が好き」という意味が込められていると考えてみると歌詞をより深く考察することができます。
それではここから歌詞を深掘りしていきます。
Mr.Children「君が好き」の歌詞考察
ここから「君が好き」の歌詞考察を進めていきます。
歌詞考察には様々な解釈ができるため、あくまで一個人の解釈として楽しんでいただければと思います。
もしもまだ願いが一つ叶うとしたら…
出展:君が好き/Mr.Children 作詞:桜井和寿
そんな空想を広げ
一日中ぼんやり過ごせば
月も濁る東京の夜だ
そしてひねり出した答えは
1番の歌い出しです。
もしもまだ、、、としているという事は、既に自分の願いが叶っていているのではないでしょうか。
つまり本命の人と両想いになりたいといった願いはかなっているけど、それでもまだ願いが叶うとしたら、、と空想を広げている事が分かります。
この空想とは何か?というのが「月も濁る東京の夜だ」という歌詞で理解できます。
この曲で「月」というのが重要な意味を持ち、「月=I love you」の意味を持つと前述しました。
「月も濁る」としており、ここでは純粋な愛ではなく、濁った愛
つまり、本命のパートナーとは別の人との恋愛・不倫の事を指していると思います。
その次に「そしてひねり出した答えは」と歌詞が続き、サビの「君が好き」につながっています。
本命のパートナーに対して「君が好き」という感情は、通常であればひねり出すほどの答えではないと思います。
つまり、本命のパートナーがいつつ、別の人との恋愛・不倫において、この関係性はダメだと頭でわかっていながらも、それでも「君が好き」という感情は変わらないという主人公の想いであり、ひねり出した答えがここで理解できます。
君が好き
出展:君が好き/Mr.Children 作詞:桜井和寿
僕が生きるうえでこれ以上の意味はなくたっていい
夜の淵 アパートの脇
くたびれた自販機で二つ 缶コーヒーを買って
サビ前のAメロの部分で、本命のパートナーがいて、不倫相手と関係を持つことを頭では悪いと思っていながらも、その別の人に対する想いは「好き」であるという考察ができたと思います。
サビでは、その不倫相手に対する想いが語られています。
このサビだけを切り取ると、純愛のラブソングですが、このAメロがあることで泥沼の不倫ソングと化しています。
ここで2番に進みます。
僕の手が君の涙拭えるとしたら
出展:君が好き/Mr.Children 作詞:桜井和寿
それは素敵だけど
君もまた僕と似たような
誰にも踏み込まれたくない
領域を隠し持っているんだろう
ここで注目したいのは最後の
「君もまた僕と似たような 誰にも踏み込まれたくない領域を隠し持っているんだろう
の部分です。
主人公であり不倫をしている「僕」と同じように、誰にも踏み込まれたくない領域を「君」も持っているんだろうとしています。
つまり、不倫相手の「君」も「僕」と同じように本命のパートナーがいながら不倫をしているということが理解できます。
君が好き
出展:君が好き/Mr.Children 作詞:桜井和寿
この響きに 潜んでる温い惰性の匂いがしても
繰り返し 繰り返し
煮え切らないメロディに添って 思いを焦がして
”温い惰性の匂いがしても”という表現が凄いですよね。
この部分の考察を進めていく上で重要な単語を3つ説明します。
- 惰性:これまで続いてきた動作や習慣などをそのまま維持しようとするさまを指す表現で、消極性や面倒くささから従来通りの判断や行動に甘んじようとするというネガティブな意味合いとして用いられることが多い
- 煮え切らない:態度がはっきりしない様子やぐずぐずしている様子
- 思いを焦がして:一途に恋しく思うという意味
歌詞の”君が好き この響きに 潜んでいる温い惰性の匂いがしても”を、前後の文脈を無視して、純愛ソングとしてこの歌詞を解釈すると
「君が好き」という言葉は、ストレートであまりにもありきたりな言葉に聞こえてしまうけど、ずっとあなたのことを思っていると解釈できます。
しかし、前後の文脈を考慮すると、互いに本命のパートナーがいる「君」と「僕」は不倫以上の関係にはなれないというのが分かっている上での「君が好き」という言葉には、本心ではなく、ただ不倫関係を維持するための口実のように聞こえるかもしれないけど、それでも君のことを想っているという「僕」の想いのことが読み取れます。
歩道橋の上には 見慣れてしまった
出展:君が好き/Mr.Children 作詞:桜井和寿
濁った月が浮かんでいて
汚れていってしまう 僕らにそっと
あぁ 空しく何かを訴えている
ここでまた「月」が出てきました。
見慣れてしまった濁った月が浮かんでいるという事は、不倫関係もかなり長く続いていると解釈できます。
決して許される行為ではないと分かっていながらも会い続ける僕らに、愛を象徴する月が何かを訴えている。
何か思うことがあるのではないでしょうか。
サビに続きます。
君が好き
出展:君が好き/Mr.Children 作詞:桜井和寿
僕が生きるうえでこれ以上の意味はなくたっていい
夜の淵 君を待ち
行き場のない 想いがまた夜空に浮かんで
君が好き 君が好き
煮え切らないメロディに添って 思いを焦がして
前の歌詞で、決して許される行為ではないと分かっていてどこか嫌悪感を抱いていたけれども、最終的には不倫相手のことが好きだという結論となっています。
淵という言葉には、「深い。深くて静か」という意味や「容易に抜けられない苦しい境遇」という意味もあります。
歌詞中の夜の淵という言葉には、人の気配がないようなひっそりとした夜にしか会えない関係性であるという意味と、容易に抜けられない不倫関係の2つの意味が込められていると考えています。
(それに加えて、夜の淵 君を待ちと韻を踏んでるのもさすが桜井さんですね)
また、行き場のない想いがまた夜空に浮かんでとしており、夜空に浮かんでいるのは月、つまり君が好きという愛情の事を指していると思います。
そんな決して表向きにはできないこの不倫関係性において、本命の人と離れ離れになるという決断はできないけど、それでも「君」を愛しているという事が読み取れます。
まとめ
ここまで「君が好き」を解説してきました。
サビだけ見ると、純愛のラブソングに聞こえますが、深く読み解いていくと泥沼の不倫ソングであることが理解できます。
桜井さんが、どういう意図や意味を込めて「君が好き」を作詞作曲したのかは桜井さんのみぞ知るところではあるのですが、「君が好き」の一個人の解釈として楽しんでいただければ幸いです。
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