1983年12月31日に放送された第34回NHK紅白歌合戦は、昭和後期の日本社会と音楽文化が、より立体的に広がっていく様子を映し出した回です。1980年代に入って数年が経ち、音楽シーンはジャンルや世代ごとに明確な特色を持つようになっていました。一方で、大晦日の夜に紅白歌合戦を観ながら一年を締めくくるという習慣は変わらず受け継がれ、紅白は「時代が変わっても変わらない年末の風景」として、多くの家庭に根付いていました。第34回は、そうした安定感と時代性が自然に共存していた紅白歌合戦です。
目次
第34回紅白歌合戦の概要
第34回NHK紅白歌合戦は1983年12月31日の大晦日に開催され、テレビとラジオの同時放送によって全国に中継されました。番組構成はこれまでの紅白の流れを踏襲し、紅組・白組に分かれた出場歌手が順番に登場し、その年を代表する楽曲を披露していく形式が採られています。30回を超えた紅白歌合戦は、進行や演出において非常に高い完成度を誇っており、長時間の生放送でありながらも、年末の時間帯に自然と寄り添う安定した番組となっていました。この回の勝敗は白組の勝利となっており、結果発表も含めて、大晦日の恒例行事として多くの家庭で楽しまれていました。
第34回紅白歌合戦が開催された1983年の出来事
1983年の日本は、経済や社会が安定した中で、個人の価値観やライフスタイルがより重視されるようになっていた時代です。音楽やファッション、娯楽の選択肢は増え、それぞれが自分の好みに合ったものを楽しむ文化が広がっていました。音楽の分野では、ニューミュージックやポップスが若い世代を中心に支持を集める一方で、演歌や歌謡曲も根強い人気を保ち続けていました。こうした背景の中で放送された紅白歌合戦は、異なる世代や価値観を一つの番組でつなぐ存在として、重要な役割を果たしていたと言えるでしょう。
第34回紅白歌合戦の出場アーティスト一覧
第34回紅白歌合戦には、紅白歌合戦の歴史を支えてきたベテラン歌手と、1980年代を代表する人気歌手がバランスよく出演しました。紅組では美空ひばり、島倉千代子、いしだあゆみ、由紀さおり、ペギー葉山などが名を連ね、長年培われてきた歌唱力と表現力で番組に安定感をもたらしています。親しみのある歌声は、紅白歌合戦ならではの安心感と重みを強く印象づけるものでした。
一方、白組には森進一、五木ひろし、三橋美智也、春日八郎、フランク永井などが出演し、それぞれが力強さや哀愁を感じさせる歌唱で視聴者を魅了しました。森進一や五木ひろしは、この時代の紅白歌合戦を象徴する存在として確固たる地位を築いており、世代を超えて支持される存在となっています。出演者の顔ぶれからは、紅白歌合戦が世代交代を進めながらも、長年の伝統を大切にしてきたことがよく伝わってきます。
第34回NHK紅白歌合戦(1983年) 出場歌手・曲目一覧
※第34回は1983年(昭和58年)12月31日に放送されました。
| 紅組歌手(優勝) | 紅組曲目 | 白組歌手 | 白組曲目 |
|---|---|---|---|
| 岩崎 宏美 | 家路 | 西城 秀樹 | ギャランドゥ |
| 柏原 芳恵(初) | 春なのに | 野口 五郎 | 19:00の街 |
| 河合 奈保子 | UNバランス | 郷 ひろみ | 素敵にシンデレラ・コンプレックス |
| 川中 美幸 | 遣らずの雨 | 大川 栄策(初) | さざんかの宿 |
| 榊原 郁恵 | 悲しきクラクション | シブがき隊 | 挑発∞(MUGENDAI) |
| 小柳 ルミ子 | お久しぶりね | 沢田 研二 | 晴れのちBLUE BOY |
| 島倉 千代子 | 積木くずし | 三波 春夫 | 放浪茣蓙枕(さすらいござまくら) |
| 牧村 三枝子 | 樹氷の宿 | 千 昌夫 | 夕焼け雲 |
| 日野 美歌(初) | 氷雨 | 梅沢 富美男(初) | 夢芝居 |
| 早見 優(初) | 夏色のナンシー | アルフィー(初) | メリーアン |
| 中森 明菜(初) | 禁区 | 近藤 真彦 | ためいきロ・カ・ビ・リ・ー |
| 高田 みづえ | そんなヒロシに騙されて | 山本 譲二 | 海鳴り |
| 杏里(初) | キャッツアイ | 新沼 謙治 | 酒とふたりづれ |
| 都 はるみ | 浪花恋しぐれ | 村田 英雄 | 空手一代 |
| 青江 三奈 | 大阪ブルース | サザンオールスターズ | 東京シャッフル |
| 松田 聖子 | ガラスの林檎 | 田原 俊彦 | さらば・・・夏 |
| 八代 亜紀 | 日本海 | 北島 三郎 | 漁歌 |
| 研 ナオコ | 泣かせて | 菅原 洋一 | アマン |
| 森 昌子 | 越冬つばめ | 五木 ひろし | 細雪 |
| 小林 幸子 | ふたたびの | 森 進一 | 冬のリヴィエラ |
| 水前寺 清子 | あさくさ物語 | 細川 たかし | 矢切の渡し |
特別企画・エピソード
| 出来事 | 内容 |
|---|---|
| 日本の四季メドレー | テレビ放送開始30周年を記念したコーナー。出場歌手が童謡・唱歌をメドレーで披露しました。 |
| タロ・ジロ登場 | この年公開された大ヒット映画『南極物語』のモデルとなったカラフト犬、タロとジロが応援に駆けつけました。 |
| アルフィー初出場 | 「メリーアン」が大ヒットしたアルフィーが初出場を果たしました。 |
まとめ
第34回NHK紅白歌合戦は1983年の大晦日に放送され、昭和後期の日本社会と音楽文化の成熟を感じさせる大会となりました。音楽の楽しみ方や価値観が多様化する中でも、紅白歌合戦は世代を超えて共有できる年末の象徴として、多くの家庭に受け入れられていました。美空ひばりや森進一、五木ひろしをはじめとする時代を代表する歌手たちが集結したこの第34回は、紅白歌合戦が「変わらない安心感」と「時代への適応」を両立させてきたことを改めて実感させる一回と言えるでしょう。