1980年12月31日に放送された第31回NHK紅白歌合戦は、昭和から次の時代へと移り変わっていく空気を色濃く映し出した回です。1970年代を通じて成熟してきた日本社会は、安定した暮らしの中で新しい価値観を模索し始めており、音楽シーンもまた多様化の流れをさらに強めていました。大晦日の夜に家族そろって**NHK紅白歌合戦**を観ながら一年を振り返るという習慣は変わらず続き、第31回は「昭和の積み重ね」と「1980年代への入口」を同時に感じさせる大会となりました
目次
第31回紅白歌合戦の概要
第31回NHK紅白歌合戦は1980年12月31日の大晦日に開催され、テレビとラジオの同時放送によって全国に中継されました。番組の基本構成は前回までと同様で、紅組・白組に分かれた出場歌手が順番に登場し、その年を代表する楽曲を披露していくスタイルが踏襲されています。30回を超えてなお、進行や演出には高い安定感があり、長時間の生放送でありながら年末の時間帯に自然と溶け込む番組づくりがなされていました。この回の勝敗は白組の勝利となっており、結果発表も含めて、大晦日の恒例行事として多くの家庭で楽しまれていたことがうかがえます。
第31回紅白歌合戦が開催された1980年の出来事
1980年の日本は、昭和後期から次の時代へと向かう過渡期にありました。経済や社会は安定期に入り、人々は大量消費の時代から、自分らしい生き方や価値観を大切にする方向へと意識を向け始めています。音楽の世界では、ニューミュージックやポップスがさらに存在感を増し、若い世代を中心に新しい表現が次々と生まれていました。一方で、長く親しまれてきた歌謡曲も依然として強い支持を集めており、世代ごとに異なる音楽が共存する時代となっていました。こうした背景の中で放送された第31回紅白歌合戦は、時代の多様性をそのまま映し出す番組として、大きな意味を持っていたと言えるでしょう。
第31回紅白歌合戦の出場アーティスト一覧
第31回NHK紅白歌合戦(1980年) 出場歌手・曲目一覧
※第31回は1980年(昭和55年)12月31日に放送されました。
| 紅組歌手(優勝) | 紅組曲目 | 白組歌手 | 白組曲目 |
|---|---|---|---|
| 榊原 郁恵 | ROBOT | 郷 ひろみ | How many いい顔 |
| 松田 聖子(初) | 青い珊瑚礁 | 田原 俊彦(初) | 哀愁でいと |
| 石野 真子 | ハートで勝負 | 野口 五郎 | コーラス・ライン |
| 高田 みづえ | 私はピアノ | 海援隊 | 贈る言葉 |
| 岩崎 良美(初) | あなた色のマノン | 西城 秀樹 | サンタマリアの祈り |
| 岩崎 宏美 | 摩天楼 | 沢田 研二 | TOKIO |
| 八神 純子(初) | パープルタウン | クリスタル・キング(初) | 大都会 |
| 五輪 真弓(初) | 恋人よ | さだ まさし | 防人の詩 |
| ロス・インディオス&シルヴィア(初) | 別れても好きな人 | もんた&ブラザーズ(初) | ダンシング・オールナイト |
| 小柳 ルミ子 | 来夢来人 | 内山田洋とクール・ファイブ | 魅惑・シェイプアップ |
| 太田 裕美 | 南風 | 新沼 謙治 | さすらい派 |
| 桜田 淳子 | 美しい夏 | 布施 明 | 愛よその日まで |
| 研 ナオコ | 夢枕 | 加山 雄三 | 湯沢旅情 |
| 島倉 千代子 | 女がひとり | フランク 永井 | 恋はお洒落に |
| ジュディ・オング | 麗華の夢 | ゴダイゴ | ポートピア |
| 金沢 明子 | 津軽あいや節 | 菅原 洋一 | ラ・クンパルシータ |
| 石川 さゆり | 鷗という名の酒場 | 細川 たかし | ほたる草 |
| 都 はるみ | 大阪しぐれ | 北島 三郎 | 風雪ながれ旅 |
| 水前寺 清子 | 三百六十五歩のマーチ | 三波 春夫 | チャンチキおけさ |
| 森 昌子 | 波止場通りなみだ町 | 千 昌夫 | 味噌汁の詩 |
| 青江 三奈 | 酔心 | 村田 英雄 | 夫婦酒 |
| 小林 幸子 | とまり木 | 森 進一 | 恋月夜 |
| 八代 亜紀 | 雨の慕情 | 五木 ひろし | ふたりの夜明け |
特別企画・エピソード
| 企画名 | 内容・出演 |
|---|---|
| フレッシュ対決 | この年にデビューし、爆発的な人気となった松田聖子と田原俊彦が初出場で対決。 |
| ニューミュージック勢 | もんた&ブラザーズ、クリスタル・キング、海援隊などが初出場し、ニューミュージックの台頭を印象づけました。 |
まとめ
第31回NHK紅白歌合戦は1980年の大晦日に放送され、昭和という時代の積み重ねと、次の時代への期待が交差する大会となりました。社会や音楽の価値観が多様化する中でも、紅白歌合戦は変わらず一年の締めくくりとして、多くの家庭に寄り添い続けていました。美空ひばりや森進一、五木ひろしをはじめとする時代を代表する歌手たちが集結したこの第31回は、紅白歌合戦が世代を超えて愛される国民的番組であることを、改めて印象づける一回と言えるでしょう。