1973年12月31日に放送された第24回NHK紅白歌合戦は、昭和後期に入った日本社会の空気感と、音楽シーンの移り変わりがよりはっきりと表れた回です。高度経済成長が一つのピークを迎え、人々の暮らしは豊かさを享受する一方で、その先の不安や変化も感じ始めていた時代でした。大晦日の夜に紅白歌合戦を観ながら一年を締めくくるという習慣は、この頃には完全に国民的な行事となっており、紅白は単なる音楽番組ではなく、日本の年末文化そのものとして受け止められていました。第24回は、そんな時代の節目に行われた、印象深い大会です。
目次
第24回紅白歌合戦の概要
第24回NHK紅白歌合戦は1973年12月31日の大晦日に開催され、テレビとラジオの同時放送で全国に中継されました。番組の基本構成はこれまでと同様で、紅組・白組に分かれた出場歌手が順番に登場し、その年を代表する楽曲を披露していくスタイルが踏襲されています。長時間の生放送でありながら、進行や演出は安定しており、年末の落ち着いた雰囲気の中で楽しめる内容となっていました。この回の勝敗は白組の勝利となっており、結果発表も含めて、大晦日の恒例行事として多くの家庭で語られていたことがうかがえます。
第24回紅白歌合戦が開催された1973年の出来事
1973年の日本は、社会的にも大きな転換点を迎えていました。オイルショックの影響により、それまで続いてきた高度経済成長に陰りが見え始め、人々の生活意識にも変化が生まれます。大量消費の時代から、暮らしを見直す方向へと価値観が移り始めた年でもありました。こうした背景の中で、音楽は人々の心を落ち着かせたり、共感を呼び起こしたりする存在として、より身近なものになっていきます。紅白歌合戦は、そうした時代の空気を映し出しながら、一年を締めくくる大切な時間を提供する番組として、これまで以上に重要な役割を担っていました。
第24回紅白歌合戦の出場アーティスト一覧
第24回NHK紅白歌合戦(1973年) 出場歌手・曲目一覧
※第24回は1973年(昭和48年)12月31日に放送されました。
| 紅組歌手(優勝) | 紅組曲目 | 白組歌手 | 白組曲目 |
|---|---|---|---|
| 小柳 ルミ子 | 漁火恋唄 | 布施 明 | 甘い十字架 |
| いしだ あゆみ | ブルー・ライト・ヨコハマ | 西郷 輝彦 | 星のフラメンコ |
| 森 昌子(初) | せんせい | 野口 五郎 | 君が美しすぎて |
| 南 沙織 | 色づく街 | 堺 正章 | 街の灯り |
| 朱里 エイコ | ジェット最終便 | 美川 憲一 | さそり座の女 |
| 和田 アキ子 | 笑って許して | 橋 幸夫 | 潮来笠 |
| 金井 克子 | 他人の関係 | フォーリーブス | 若いふたりに何かが起こる |
| 八代 亜紀(初) | なみだ恋 | 菅原 洋一 | 今日でお別れ |
| チェリッシュ(初) | てんとう虫のサンバ | ガロ(初) | 学生街の喫茶店 |
| 麻丘 めぐみ(初) | わたしの彼は左きき | 三善 英史(初) | 円山・花町・母の町 |
| 山本 リンダ | 狙いうち | ぴんから兄弟(初) | 女のみち |
| ザ・ピーナッツ | ウナ・セラ・ディ東京 | 上條 恒彦 | シャンテ |
| アグネス・チャン(初) | ひなげしの花 | 郷 ひろみ(初) | 男の子女の子 |
| 天地 真理 | 恋する夏の日 | にしきの あきら | はじめは片想い |
| 由紀 さおり | 恋文 | 鶴岡雅義と東京ロマンチカ | 君は心の妻だから |
| 欧陽 菲菲 | 恋の十字路 | 沢田 研二 | 危険なふたり |
| 佐良 直美 | 世界は二人のために | フランク 永井 | 有楽町で逢いましょう |
| 青江 三奈 | 長崎ブルース | 森 進一 | 冬の旅 |
| 渡辺 はま子 | 桑港のチャイナタウン | 藤山 一郎 | 長崎の鐘 |
| 水前寺 清子 | いっぽんどっこの唄 | 三波 春夫 | 大利根無情 |
| ちあき なおみ | 夜間飛行 | 五木 ひろし | ふるさと |
| 都 はるみ | 涙の連絡船 | 水原 弘 | 君こそわが命 |
| 島倉 千代子 | からたち日記 | 北島 三郎 | 帰ろかな |
特別企画・エピソード
| 出来事 | 内容 |
|---|---|
| 懐かしのメロディー | 特別枠として、渡辺 はま子が「桑港のチャイナタウン」、藤山 一郎が「長崎の鐘」を披露しました。 |
| フレッシュな初出場 | 森 昌子、アグネス・チャン、郷 ひろみなど、70年代アイドルブームを牽引する歌手が初出場しました。 |
まとめ
第24回NHK紅白歌合戦は1973年の大晦日に放送され、社会や経済の転換期にあった日本の年末を象徴する大会となりました。オイルショックという大きな出来事を背景に、人々がこれまでの暮らしを見つめ直す中で、紅白歌合戦は変わらず一年の締めくくりとして、多くの家庭に寄り添う存在であり続けました。美空ひばりや森進一、五木ひろしをはじめとする時代を代表する歌手たちが集結したこの第24回は、紅白歌合戦が時代とともに役割を変えながらも、国民的番組として歩み続けてきたことを実感させる一回と言えるでしょう。