1971年12月31日に放送された第22回NHK紅白歌合戦は、昭和後期へと向かう日本社会の空気感と、音楽シーンの変化がよりはっきりと表れ始めた回です。高度経済成長の勢いは続きながらも、人々の価値観やライフスタイルは少しずつ多様化し、音楽の楽しみ方にも変化が生まれていました。大晦日に紅白歌合戦を観て一年を締めくくるという習慣はすでに完全に定着しており、紅白は「年末最大のイベント」として、多くの家庭にとって欠かせない存在となっていました。第22回は、そんな安定期に入った紅白歌合戦が、次の時代への移行を静かに進めていく過程を感じさせる大会です。
目次
第22回紅白歌合戦の概要
第22回NHK紅白歌合戦は1971年12月31日の大晦日に開催され、テレビとラジオの同時放送によって全国に中継されました。番組構成は前回までと同様に、紅組・白組に分かれた歌手たちが順に登場し、その年を代表する楽曲を披露していく形式が踏襲されています。司会進行や演出は非常に安定しており、長時間の生放送でありながらも、視聴者が自然な流れで楽しめる構成となっていました。この回の勝敗は白組の勝利となっており、結果発表も含めて大晦日の恒例行事として、多くの家庭で話題に上っていたことがうかがえます。
第22回紅白歌合戦が開催された1971年の出来事
1971年の日本は、高度経済成長が続く一方で、社会の価値観が少しずつ変化し始めていた時代です。大量消費の時代が進む中で、若者文化や個人の感性が重視されるようになり、音楽の世界でもフォークやニューミュージックといった新しいジャンルが存在感を強めていきました。人々は単なる流行としての音楽だけでなく、自分自身の気持ちや生き方と重ね合わせて音楽を楽しむようになっていきます。こうした時代背景の中で放送された紅白歌合戦は、伝統的な歌謡曲を大切にしながらも、変化する時代の空気を映し出す番組として、重要な役割を果たしていました。
第22回紅白歌合戦の出場アーティスト一覧
第22回紅白歌合戦には、昭和歌謡を代表するベテラン歌手と、時代を象徴する人気歌手が数多く出演しました。紅組では美空ひばり、島倉千代子、いしだあゆみ、由紀さおりなどが名を連ね、確かな歌唱力と表現力で番組を支えています。従来の歌謡曲の魅力に加え、より現代的な感覚を持つ楽曲が増えてきている点も、この時期ならではの特徴と言えるでしょう。
一方、白組は力強さと哀愁を併せ持つ歌声で紅組に対抗しました。特に森進一はこの時期から紅白の中心的存在として存在感を高めており、昭和後期の紅白歌合戦を語るうえで欠かせない歌手となっていきます。出演者の顔ぶれからは、紅白歌合戦が世代交代の流れの中にあったことがはっきりと感じられます。
第22回NHK紅白歌合戦(1971年) 出場歌手・曲目一覧
※第22回は1971年(昭和46年)12月31日に放送されました。
| 紅組歌手 | 紅組曲目 | 白組歌手(優勝) | 白組曲目 |
|---|---|---|---|
| 南沙織(初) | 17才 | 尾崎紀世彦(初) | また逢う日まで |
| ピンキーとキラーズ | 何かいいことありそうな | にしきのあきら | 空に太陽がある限り |
| 和田アキ子 | 天使になれない | 美川憲一 | 想い出おんな |
| ちあきなおみ | 私という女 | 坂本九 | この世のある限り |
| 岸洋子 | 希望 | 西郷輝彦 | 掠奪 |
| 加藤登紀子(初) | 知床旅情 | デューク・エイセス | いい湯だなメドレー |
| 青江三奈 | 長崎未練 | 五木ひろし(初) | よこはま・たそがれ |
| 小柳ルミ子(初) | わたしの城下町 | はしだのりひことクライマックス(初) | 花嫁 |
| 藤圭子 | みちのく小唄 | 舟木一夫 | 初恋 |
| 島倉千代子 | 竜飛岬 | 北島三郎 | 北海太鼓 |
| トワ・エ・モワ | 虹と雪のバラード | ダーク・ダックス | 白銀は招くよメドレー |
| 由紀さおり | 初恋の丘 | 菅原洋一 | 忘れな草をあなたに |
| 朝丘雪路 | 雨がやんだら | フォーリーブス | 地球はひとつ |
| 雪村いづみ | 涙 | ヒデとロザンナ | 望むものはすべて |
| 伊東ゆかり | 誰も知らない | アイ・ジョージ | 自由通りの午後 |
| いしだあゆみ | 砂漠のような東京で | 村田英雄 | 人生劇場 |
| 本田路津子(初) | 一人の手 | フランク永井 | 羽田発7時50分 |
| ザ・ピーナッツ | サンフランシスコの女 | 堺正章(初) | さらば恋人 |
| 渚ゆう子(初) | 京都慕情 | 千昌夫 | わが町は緑なりき |
| 都はるみ | 港町 | 三波春夫 | 桃中軒雲右ェ門 |
| 真帆志ぶき(初) | 嘆きのインディアン | 橋幸夫 | 次郎長笠 |
| 弘田三枝子 | バラの革命 | 布施明 | 愛の終わりに |
| 佐良直美 | 片道列車 | 鶴岡雅義と東京ロマンチカ | 追憶 |
| 水前寺清子 | ああ男なら男なら | 水原弘 | こんど生まれて来る時は |
| 美空ひばり | この道を行く | 森進一 | おふくろさん |
特別企画・エピソード
| 出来事 | 内容 |
|---|---|
| 新旧アイドルの競演 | 南沙織「17才」や小柳ルミ子「わたしの城下町」など、70年代を代表するアイドルのデビュー曲が披露されました。 |
| 五木ひろし 初出場 | 「よこはま・たそがれ」が大ヒットした五木ひろしが初出場を果たしました。 |
まとめ
第22回NHK紅白歌合戦は1971年の大晦日に放送され、紅白歌合戦が安定期に入りながらも、次の時代へと静かに歩みを進めていたことを示す回となりました。社会や音楽の価値観が変化していく中でも、紅白歌合戦は世代を超えて共有できる国民的番組として、多くの家庭に受け入れられていました。美空ひばりや森進一をはじめとする時代を代表する歌手たちが集結したこの第22回は、紅白歌合戦が新たなフェーズへ向かう過程を感じさせる、重要な一回と言えるでしょう。