1969年12月31日に放送された第20回NHK紅白歌合戦は、紅白歌合戦が20回という節目を迎えた記念的な大会です。昭和40年代後半に入り、日本社会は高度経済成長の真っただ中にあり、人々の暮らしや価値観は大きく変化していました。テレビは完全に生活の一部となり、大晦日の夜に紅白歌合戦を観ながら一年を締めくくるという過ごし方は、世代を超えて共有される国民的な習慣となっていました。第20回は、これまで積み重ねてきた紅白の歴史と、次の時代へ向かう音楽シーンの変化が同時に感じられる、非常に象徴的な回です。
目次
第20回紅白歌合戦の概要
第20回NHK紅白歌合戦は1969年12月31日の大晦日に開催され、テレビとラジオの同時放送で全国に中継されました。番組構成はすでに確立された形となっており、紅組・白組に分かれた歌手たちが順に登場し、その年を代表する楽曲を披露する流れが踏襲されています。20回目という節目の大会でありながら、特別に派手な演出に寄るのではなく、紅白らしい安定感のある進行が印象的でした。この回の勝敗は白組の勝利となっており、結果発表も含めて、年末の恒例行事として多くの家庭で語られていました。紅白歌合戦が長く続く番組として成熟期に入っていたことを強く感じさせる大会です。
第20回紅白歌合戦が開催された1969年の出来事
1969年の日本は、高度経済成長によって社会全体が大きく変わり続けていた時代でした。一方で、若者文化の広がりや価値観の多様化が進み、音楽の世界でもフォークやポップスなど新しい潮流が存在感を増していきます。世界的には人類初の月面着陸が行われた年でもあり、未来への期待が強く意識された時代でした。こうした背景の中で放送された紅白歌合戦は、伝統的な歌謡曲を大切にしながらも、時代の空気を内包する番組として、多くの人々に受け入れられていました。1969年という年は、紅白歌合戦が「これまで」と「これから」をつなぐ存在になっていたことを象徴しています。
第20回紅白歌合戦の出場アーティスト一覧
第20回紅白歌合戦には、昭和歌謡を代表するベテラン歌手と、その時代を象徴する人気歌手が多数出演しました。紅組では美空ひばり、島倉千代子、江利チエミ、雪村いづみ、ペギー葉山、奈良光枝など、長年にわたって第一線で活躍してきた女性歌手たちが名を連ね、安定した歌唱力と存在感で番組を支えています。紅組のステージからは、紅白歌合戦が築いてきた伝統と格式が色濃く感じられました。
一方、白組には三橋美智也、春日八郎、フランク永井、藤山一郎、岡本敦郎、ディック・ミネといった昭和歌謡界を代表する男性歌手が出演し、力強さと哀愁を併せ持つ歌声で番組を盛り上げました。これらの出演者は、紅白歌合戦の歴史を語るうえで欠かせない存在であり、第20回という節目にふさわしい顔ぶれだったと言えるでしょう。
第20回NHK紅白歌合戦(1969年) 出場歌手・曲目一覧
※第20回は1969年(昭和44年)12月31日に放送されました。
| 紅組歌手(優勝) | 紅組曲目 | 白組歌手 | 白組曲目 |
|---|---|---|---|
| 青江三奈 | 池袋の夜 | 布施明 | バラ色の月 |
| いしだあゆみ(初) | ブルー・ライト・ヨコハマ | 千昌夫 | 君がすべてさ |
| 小川知子 | 初恋のひと | 西郷輝彦 | 海はふりむかない |
| カルメン・マキ(初) | 時には母のない子のように | アイ・ジョージ | ク・ル・ク・ク・パロマ |
| 越路吹雪 | 愛の讃歌 | 春日八郎 | 別れの一本杉 |
| 奥村チヨ(初) | 恋泥棒 | ザ・キング・トーンズ(初) | グッド・ナイト・ベイビー |
| 水前寺清子 | 真実一路のマーチ | 三田明 | サロマ湖の空 |
| 由紀さおり(初) | 夜明けのスキャット | デューク・エイセス | 筑波山麓合唱団 |
| 伊東ゆかり | 宿命の祈り | 菅原洋一 | 潮風の中で |
| 岸洋子 | 夜明けのうた | 坂本九 | 見上げてごらん夜の星を |
| 森山良子(初) | 禁じられた恋 | 鶴岡雅義と東京ロマンチカ | 君は心の妻だから |
| 島倉千代子 | すみだ川 | 三波春夫 | 大利根無情 |
| 弘田三枝子 | 人形の家 | 橋幸夫 | 京都・神戸・銀座 |
| 黛ジュン | 雲にのりたい | 佐川満男 | 今は幸せかい |
| 西田佐知子 | アカシアの雨がやむとき | 村田英雄 | 王将 |
| 梓みちよ | こんにちは赤ちゃん | 水原弘 | 君こそわが命 |
| 高田恭子(初) | みんな夢の中 | 美川憲一 | 女とバラ |
| 中尾ミエ | 忘れられた坊や | ダーク・ダックス | あんな娘がいいな |
| ピンキーとキラーズ | 星空のロマンス | 内山田洋とクール・ファイブ(初) | 長崎は今日も雨だった |
| ザ・ピーナッツ | ウナ・セラ・ディ東京 | フランク永井 | 君恋し |
| 佐良直美 | いいじゃないの幸せならば | 舟木一夫 | 夕映えのふたり |
| 都はるみ | はるみの三度笠 | 北島三郎 | 加賀の女 |
| 美空ひばり | 別れてもありがとう | 森進一 | 港町ブルース |
特別企画・エピソード
| 出来事 | 内容 |
|---|---|
| 放送20回記念大会 | 20回目を記念し、「20回記念紅白彩る明治・大正・昭和」として、懐かしの名曲が多く選曲されました(「愛の讃歌」「別れの一本杉」「見上げてごらん夜の星を」など)。 |
| 豪華な初出場組 | いしだあゆみ、由紀さおり、森山良子、内山田洋とクール・ファイブ、カルメン・マキなど、現在も歌い継がれる名曲と共に多くの実力派が初出場しました。 |
まとめ
第20回NHK紅白歌合戦は1969年の大晦日に放送され、20回という大きな節目を迎えた記念すべき大会となりました。社会や音楽の価値観が大きく変化する中でも、紅白歌合戦は世代を超えて楽しめる国民的番組として、その存在感を保ち続けていました。美空ひばりや三橋美智也をはじめとする昭和歌謡のスターたちが集結したこの第20回は、紅白歌合戦のこれまでの歩みを振り返りつつ、次の時代へとつながっていく重要な一回として、今なお語り継がれています。