音楽のノウハウ

【海外文献も参照】子どもがピアノを始めるメリットを分かりやすく解説

この記事を読んでくださっている人の中には、ピアノを子どもが始めることのメリットについて気になっている人も多いのではないでしょうか。

子どもがピアノを始めるメリットとして、集中力や記憶力、創造性といった認知能力の向上、脳の発達促進など、色んなメリットがあることを聞いたことがあるという人も多いと思いますし、子どもにピアノを始めたいと思っている人も多いと思います。

本記事では、子どもがピアノを習うメリットについて様々な情報源を参考にしながら解説していきます。

目次

脳・認知機能への影響

空間認知・空間‐時間推論が伸びやすい傾向

研究で比較的まとまっているのが、空間認知や空間‐時間推論に関するプラス効果です。

幼児期の子どもを対象に、鍵盤レッスン群と別の活動群、あるいはコントロール群を比べた研究では、ピアノ群だけが空間‐時間推論テストで有意に向上したという報告があります。空間‐時間推論は、図形や積み木、物体の回転といった領域と関係が深く、算数の文章題や図形問題にもつながりやすい能力として扱われます。

参照:Music training causes long-term enhancement of preschool children's spatial-temporal reasoning

同様に、幼稚園児が一定期間ピアノ/キーボードレッスンを受けた研究でも、手の動きや空間記憶、算数などで有意な向上が見られたとされています。

参照:Piano Keyboard Training and the Spatial-Temporal Development of Young Children Attending Kindergarten Classes in Greece

一方で、学年が上がった子どもに長期の個人ピアノレッスンを行った縦断研究では、初期には差が出たものの、年数が進むと差が薄れるケースも報告されており、効果が長期に残るかどうかは一律には言えないともされています。

参照:The Effects of Three Years of Piano Instruction on Children's Cognitive Development
参照:How musical training affects cognitive development: rhythm, reward and other modulating variables
参照:The effects of three years of piano instruction on children’s cognitive development

まとめると、特に幼児〜小学校低学年の時期に、鍵盤学習が空間系の能力を一時的に押し上げる傾向はあるものの、効果の大きさは小さめで、継続状況や練習量に左右される、という言い方が現実的です。

IQ(一般的な賢さ)は「わずかな上積み」の可能性

音楽レッスンとIQの関係では、6歳児を対象に、キーボードや歌のレッスン、演劇、何もしない群に分けて比較した研究がよく引用されます。この研究では、音楽レッスン群のIQの伸びが他群より少し大きかったとされ、「音楽レッスンはIQをわずかに押し上げる」という結論が提示されています。

ただし、その後の再解析や批判では、統計的な群のまとめ方の妥当性や、演劇など他の習い事でも近い伸びが見られる点が指摘されており、「音楽だけが特別にIQを上げる」と断定しにくいという見解も有力です。

参照:Do Music Lessons Really Make Children Smarter?
参照:Do MUSIC LESSONS ENHANCE IQ? A Reanalysis of Schellenberg (2004)

したがって、「ピアノを含む音楽学習でIQテストの伸びが少し大きくなる傾向は報告されているが、他の知的・芸術的な習い事と比べて圧倒的に優れているとまでは言い切れない」といえるでしょう。

注意力・実行機能は、学齢期の“学びやすさ”に間接的に効く

ピアノ教育を受けた子どもが、注意持続、言語推論、記憶、論理的知能、心理運動スキルなどで非ピアノ群より高い成績を示したという報告があります。

参照:Effect of piano education on the attention skills of 7-12 year old children

また、音楽教育を受けた子どもが抑制、計画、言語知能などの実行機能テストで改善を示したとする研究もあり、一定期間の器楽プログラムを受けた子どもが、別プログラムの対照群よりワーキングメモリ課題で優れていた、という報告もあります。

参照:Benefits of children learning to play piano

ワーキングメモリや抑制、注意コントロールは、読み書きや算数、授業中の集中といった日常の学びに直結しやすい領域です。だからこそ、ピアノ学習が「テストの点を直接押し上げる」というよりは、「集中しやすくなる」「やるべきことを順番に処理できる」といった“学びの土台”にじわじわ関わる可能性がある、といえることができるのではないでしょうか。

脳構造の変化が観察されることがある

MRIを用いた研究では、ピアノレッスンを受けた子どもに、運動野、脳梁の中部、一次聴覚野などで組織量の増大が見られたという報告があります。大人のプロ音楽家で見られる構造変化と類似している、とする記述もあり、鍵盤演奏が脳の可塑性を刺激しやすいことが示唆されています。

参照:How musical training affects cognitive development: rhythm, reward and other modulating variables

ピアノは、両手を別々に動かしながら、楽譜を読み、音を聴き、次の音を予測して調整する活動です。視覚・聴覚・運動を同時に動員するため、多数の脳領域を一緒に使う負荷が高く、その分「使うほど配線が強化される」という神経可塑性の性質と相性が良い、という説明ができます。

参照:「ピアノを習うと頭が良くなる」脳科学者も認める、ピアノを習うと頭が良くなる理由を詳しく解説
参照:How musical training affects cognitive development: rhythm, reward and other modulating variables

学力・言語・読解への影響

読み書き・語彙・音韻処理に関連する可能性

音楽教育と読み書き能力の関連を示す研究は複数あり、音楽介入を行った5〜6歳児で語彙や音素処理の発達が促進されたという報告があります。ピアノ(音楽)学習者が語彙記憶や言語記憶で非音楽群より優れていたとする研究もあり、音韻ワーキングメモリやリズム処理が言語処理と一部重なることが背景として語られます。読書が苦手な児童へのリズム中心の音楽介入で、読解力や正確さ、読書速度が改善したという報告もあり、音楽活動が言語系の処理を支える可能性が示されています。

参照:The Impact of Actively Making Music on The Intellectual, Social and Personal Development of Children and Young People: A Summary

ここで重要なのは、「ピアノだけが効く」と言い切るよりも、音高やリズム、楽譜処理といった音楽教育の要素が、「音の単位を聞き分ける力」や「リズムパターンを保持する力」を鍛え、それが読解や語彙習得に波及する、という形で整理できます。

算数・数学は「直接の点数アップ」よりも“関連能力”が育ちやすい

空間‐時間推論の研究群は、算数の文章題や図形問題に関係しうる能力が伸びる可能性を示唆します。また、ピアノ/キーボード訓練後に算数サブテストが有意に向上したという報告もあります。

参照:Music training causes long-term enhancement of preschool children's spatial-temporal reasoning

ただし、3年間のピアノレッスンで自己肯定感や音楽の成績は向上したが、標準化学力テストの数学・言語スコアには有意差がなかった、という報告もあり、「ピアノを習えば算数の点が確実に上がる」とは一貫して言えません。

参照:Effects of Three Years of Piano Instruction on Children’s Academic Achievement, School Performance and Self-Esteem

「計算ドリルの成績が劇的に上がる」というより、「算数に関係する空間認知や、課題に粘り強く向き合う姿勢が育つ可能性がある」と説明するほうがエビデンスとズレにくいでしょう。

情緒・メンタルヘルスへのメリット

感情の調整やストレス低減につながる可能性

ボランティアピアノ教育の影響を調査した研究では、自信の向上、ストレス低減、新しいことを学ぶ意欲の向上、幸福感や誇り、共感性の増加、不安や怒り、緊張の軽減、リラックスの向上などが報告されています。音楽による情緒調整は、発達障害児を対象とした音楽療法の文脈でも研究されており、感情表現や情緒調整スキルの向上が示されたという報告があります。

参照:An Empirical Analysis of the Role of Piano Performance in Alleviating Psychological Trauma in People with Psychological Isolation Disorder

また、ストレスホルモン(コルチゾール)に関しては、幼児が音楽パフォーマンスを行う場面で一時的に上がることがある一方、経験を重ねることで不安が軽減し、自己効力感が高まる可能性を示すデータもあり、「本番の場数」がレジリエンス育成につながる、という読み方ができます。つまり、発表会や人前で弾く経験は、負荷にもなり得る一方で、うまく設計されれば心の強さを育てる要素にもなり得ます。

参照:Children’s feelings about piano performances across a year of study

自尊感情(自己肯定感)が高まったという報告

3年のピアノレッスン研究では、ピアノを習った子どもの自尊感情がコントロール群より有意に高かったと報告されています。週1回のピアノを3年間続けた子どもで自尊感情が高くなった、という形で紹介されることもあり、「難しい曲を練習して、人前で弾ききる」という積み重ねが、自己効力感と達成感を作りやすい、という解釈につながります。

参照:Effects of Three Years of Piano Instruction on Children’s Academic Achievement, School Performance and Self-Esteem
参照:Benefits of children learning to play piano

社会性・コミュニケーションの発達

共感や助け合いなど“プロソーシャル行動”の伸び

ピアノは個人レッスンの印象が強いですが、連弾や発表会、アンサンブルなど、他者と関わる場面も実際には多く、音楽活動全般の研究から社会性への効果が示されています。

グループ音楽トレーニングの研究では、音楽グループの子どもがコントロール群より共感とプロソーシャル行動の伸びが大きかったと報告され、特に元々プロソーシャルスキルが低かった子で効果が大きかったという結果も示されています。短期間の音楽プログラムでも、協力やシェア、さらに実行機能の一部が向上したという報告があり、早期の音楽活動が社会性と実行機能の双方を支える可能性が語られています。

参照:Musical Activities, Prosocial Behaviors, and Executive Function Skills of Kindergarten Children
参照:Engaging with happy-sounding music promotes helping behavior in 18-month-olds

「ピアノ=一人で黙々」と決めつけるより、連弾や合奏、発表会など“人と一緒に音を合わせる機会”が増えるほど、協調性や思いやりを育てる場になりやすいということができます。

身体・運動発達へのメリット

微細運動能力と手と目の協調

ピアノ/キーボード訓練後に「手の動き」テストでスコアが有意に向上したという報告があります。さらに、MRI研究で運動関連領域の変化が示されたこともあり、指の独立運動や運指の練習が、脳レベルの変化として反映されている可能性が示唆されています。

幼児期のピアノ練習は、鉛筆を持つ、ハサミを使うといった微細運動スキルに間接的に良い影響を与えうる、という見立ても可能です。ただし、ここも「必ず伸びる」と断定するより、練習量や継続状況との関係を前提に語るほうが誇張を避けられます。

参照:Piano Keyboard Training and the Spatial-Temporal Development of Young Children Attending Kindergarten Classes in Greece
参照:How musical training affects cognitive development: rhythm, reward and other modulating variables

発達障害・ADHDなど特別なニーズへの可能性

ADHDでは注意力の改善が示唆されるが、位置づけは“補完”が妥当

ピアノレッスンと注意トレーニングを比較した研究の紹介では、どちらも注意力や記憶が向上した一方で、ピアノ群のほうが脳の変化が大きく、持続も見られたという内容が言及されています。また、ADHDの幼児に対して一定期間のピアノトレーニングを行い、注意力テストで有意な改善が見られたとする小規模研究もあります。ADHDや自閉スペクトラム児について、音楽レッスン後に読解や綴り、注意持続が改善したという報告をまとめるレビューや教育現場の報告も増えています。

ただし、こうした領域は小規模研究や症例報告レベルのものも多く、標準的治療を置き換えるものではなく、補完的な支援として有望、と位置づけるのが妥当です。ピアノが向くかどうかは、指導者側が特性に配慮できるか、本人が安心して取り組めるか、といった環境要因にも強く依存します。

参照:The Cognitive Benefits of Learning Piano for Children
参照:Positive Effects of Music Lessons on Students with ADHD and/or Autism - Cook Music School
参照:How Music Saved My Son’s Life

自閉スペクトラムでは情緒面・コミュニケーション面の報告がある

自閉症児を対象にした音楽療法の研究では、受動的な音楽聴取と能動的な演奏を組み合わせたプログラムによって、肯定的情動の増加、常同行動の減少、注意持続時間の延長、アイコンタクトや発話の改善などが報告されています。ピアノ演奏トレーニングが情緒的緊張を下げる効果を持つとする研究もあり、一定条件下で「自己表現の安全な場」になり得る、という方向性が示唆されています。

参照:An Empirical Analysis of the Role of Piano Performance in Alleviating Psychological Trauma in People with Psychological Isolation Disorder
参照:Piano Teaching Strategies for ADHD Students

学校生活全体・人生スパンで見たメリット

学校生活の質が上がる可能性

長期の音楽教育を受けた子どもは、学校生活への満足度や達成感、機会の多さといった主観的な学校生活の質が高いという報告があります。音楽活動が授業への積極的参加やクラスの雰囲気の改善に寄与する、といった方向性も語られており、「成績アップ」だけでなく「学校が好きになる」「居場所感が増える」というメリットもあります。

参照:Benefits of children learning to play piano
参照:Effects of Three Years of Piano Instruction on Children’s Academic Achievement, School Performance and Self-Esteem

大人になってからの脳の健康に関する示唆

双子研究では、継続的に音楽活動に関わった側のほうが、軽度認知障害や認知症の発症リスクが低かったと報告されています。音楽活動が認知予備能を高め、加齢による認知機能低下を緩やかにする、という理論も提案されています。

もちろん、これは「子どもがピアノをやれば将来必ず認知症を防げる」という話ではありません。ただ、「子どもの頃から音楽に親しむことが、長い目で見た脳の健康にもつながりうる」というライフスパンの視点は、過度に煽らずに提示しやすいポイントです。

参照:The brain-boosting power of piano: Playing music linked to 60% lower risk of cognitive decline

ピアノによるメリットを左右する要因

始める年齢は早いほど有利になりやすい傾向にある

幼児期は神経可塑性が高く、音楽教育が脳発達に影響しやすい敏感期とされます。一方で、別の縦断研究では9〜12歳でも効果が確認されていることから、小学校低学年〜中学年で始めても十分メリットは得られる、という整理ができます。よくあるまとめとしては、「幼児〜小学校低学年がベストになりやすいが、何歳からでも脳にはプラスになりうる」というトーンが近いです。

参照:「ピアノを習うと頭が良くなる」脳科学者も認める、ピアノを習うと頭が良くなる理由を詳しく解説
参照:How musical training affects cognitive development: rhythm, reward and other modulating variables

練習量と継続が、効果の出方と持続性に直結しやすい

3年のピアノレッスン研究では、3年目に差が消えた理由としてモチベーション低下や練習量の減少が言及され、出席率と家庭での練習時間が認知向上の一部を説明したと報告されています。別の研究でも、練習時間や在籍年数が長いほど、認知・実行機能・学力との関連が強い傾向が示されています。

つまり、効果の話をするなら「いつ始めるか」以上に、「本人が無理なく続けられるか」「練習が習慣として回るか」「先生や環境と合うか」のほうが、現実には大きな分かれ道になりやすい、ということです。

参照:The effects of three years of piano instruction on children’s cognitive development

必ずしもピアノである必要があるのか?「ピアノならでは」と「他の習い事でも得られるもの」の切り分け

研究全体を俯瞰すると、構造化されていて認知的負荷の高い習い事は、IQや学力とある程度共通して関連しうる、という指摘があります。演劇やダンス、スポーツでも集中力や自己管理、社会性が育つため、「音楽だけが特別」とは言いにくいという批判が出るのは自然です。

それでもピアノ/音楽に特徴的な点としては、両手を別々に動かし、視覚(楽譜)と聴覚(音)を同時処理する複雑さがあり、脳梁や運動野、聴覚野のような領域で構造変化が観察されていることが挙げられます。さらに、音高・リズム・読譜処理が言語の音韻処理やリズム処理と近いネットワークを共有している、という説明も組み立てやすいです。加えて、合奏・合唱・連弾などの共同活動を通じて、共感や助け合いといったプロソーシャル行動を引き出しやすいという研究もあります。

参照:Engaging with happy-sounding music promotes helping behavior in 18-month-olds
参照:The Impact of Actively Making Music on The Intellectual, Social and Personal Development of Children and Young People: A Summary

まとめ

子どもがピアノを習うことには様々なメリットがあると言われています。音楽の技術を習得するだけでなく、心を豊かにし、将来の可能性を広げるための経験となります。

Mr.Lyric 編集部

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