1970年12月31日に放送された第21回NHK紅白歌合戦は、日本社会が大きな転換点を迎えていた時代背景と強く結びついた回です。高度経済成長が続く中で、人々の生活はより豊かになり、価値観やライフスタイルも多様化していきました。この年は大阪万博が開催された年としても知られ、日本全体が「未来」や「進歩」を強く意識していた時代です。そうした空気の中で迎えた第21回紅白歌合戦は、これまで積み上げてきた伝統と、新しい時代の音楽が交差する場として、多くの視聴者に強い印象を残しました。
目次
第21回紅白歌合戦の概要
第21回NHK紅白歌合戦は1970年12月31日の大晦日に開催され、テレビとラジオの同時放送で全国に中継されました。番組構成はすでに完成された形となっており、紅組・白組に分かれた出場歌手たちが順番に登場し、その年を代表する楽曲を披露していくスタイルが踏襲されています。司会進行も非常に安定しており、長時間の生放送でありながら、年末の雰囲気を楽しみながら自然に視聴できる構成となっていました。この回の勝敗は白組の勝利となっており、結果発表も含めて、大晦日の恒例行事として多くの家庭で話題に上っていました。
第21回紅白歌合戦が開催された1970年の出来事
1970年は、日本にとって象徴的な年でした。大阪万博の開催により、日本は世界に向けて経済力と技術力をアピールし、「成長する国」としての姿を強く印象づけました。一方で、若者文化の広がりや価値観の変化が進み、音楽の世界でもフォークソングやニューミュージックといった新しい流れが存在感を増していきます。こうした社会的変化の中で、紅白歌合戦は伝統的な歌謡曲を大切にしながらも、時代の空気を取り込み続ける番組として、多くの人々に受け入れられていました。1970年という年は、紅白歌合戦が次の時代へと進んでいく入口に立っていたことを感じさせます。
第21回紅白歌合戦の出場アーティスト一覧
第21回紅白歌合戦には、昭和歌謡を代表するベテラン歌手と、当時の音楽シーンを彩る人気歌手が多数出演しました。紅組では美空ひばり、島倉千代子、いしだあゆみ、由紀さおり、ペギー葉山などが名を連ね、情感豊かな歌唱と安定した表現力でステージを支えています。従来の歌謡曲に加え、より現代的な感覚を持つ楽曲も増え始めており、紅組の構成からも時代の移り変わりが感じられました。
一方、白組には森進一、三橋美智也、春日八郎、フランク永井、藤山一郎などが出演し、力強さと哀愁を併せ持つ歌声で番組を盛り上げました。特に森進一はこの頃から紅白の常連として存在感を高めており、昭和後期の紅白を象徴する存在へと成長していきます。出演者の顔ぶれからは、紅白歌合戦が世代交代の時期に差しかかっていたことがうかがえます。
第21回NHK紅白歌合戦(1970年) 出場歌手・曲目一覧
※第21回は1970年(昭和45年)12月31日に放送されました。
| 紅組歌手(優勝) | 紅組曲目 | 白組歌手 | 白組曲目 |
|---|---|---|---|
| 水前寺清子 | 大勝負 | 村田英雄 | 闘魂 |
| 和田アキ子(初) | 笑って許して | 水原弘 | へんな女 |
| ザ・ピーナッツ | 東京の女 | 野村真樹(初) | 一度だけなら |
| 日吉ミミ(初) | 男と女のお話 | 坂本九 | マイ・マイ・マイ |
| 森山加代子 | 白い蝶のサンバ | 佐川満男 | いつでもどうぞ |
| 黛ジュン | 土曜の夜何かが起きる | 橋幸夫 | いつでも夢を |
| 佐良直美 | どこへ行こうかこれから二人 | 鶴岡雅義と東京ロマンチカ | 別れの誓い |
| 弘田三枝子 | ロダンの肖像 | 美川憲一 | みれん町 |
| ピンキーとキラーズ | 土曜日は一番 | ダーク・ダックス | ドンパン節 |
| 小川知子 | 思いがけない別れ | 千昌夫 | 心の旅路 |
| トワ・エ・モワ(初) | 空よ | ヒデとロザンナ(初) | 愛は傷つきやすく |
| 島倉千代子 | 美しきは女の旅路 | 三波春夫 | 織田信長 |
| 藤圭子(初) | 圭子の夢は夜ひらく | 西郷輝彦 | 真夏のあらし |
| 森山良子 | 明日に架ける橋 | 内山田洋とクール・ファイブ | 噂の女 |
| 辺見マリ(初) | 私生活 | フランク永井 | 大阪流し |
| 西田佐知子 | 女の意地 | にしきのあきら(初) | もう恋なのか |
| ちあきなおみ(初) | 四つのお願い | デューク・エイセス | ドライ・ボーンズ |
| 都はるみ | 男が惚れなきゃ女じゃないよ | 布施明 | 愛は不死鳥 |
| いしだあゆみ | あなたならどうする | 舟木一夫 | 紫のひと |
| 奥村チヨ | 嘘でもいいから | フォーリーブス(初) | あしたが生まれる |
| 由紀さおり | 手紙 | アイ・ジョージ | リパブリック讃歌 |
| 伊東ゆかり | さすらい | 菅原洋一 | 今日でお別れ |
| 青江三奈 | 国際線待合室 | 北島三郎 | 誠 |
| 美空ひばり | 人生将棋 | 森進一 | 銀座の女 |
特別企画・エピソード
| 出来事 | 内容 |
|---|---|
| 美空ひばりの司会兼大トリ | 紅組司会を務めた美空ひばりが、紅組トリ(および大トリ)も務めるという史上初の快挙を成し遂げました。 |
| 藤圭子ら初出場 | 「圭子の夢は夜ひらく」で大ブレイクした藤圭子や、和田アキ子、ちあきなおみ、トワ・エ・モワ、ヒデとロザンナ、にしきのあきら、フォーリーブスなど、多くの人気歌手が初出場を果たしました。 |
まとめ
第21回NHK紅白歌合戦は1970年の大晦日に放送され、日本社会が大きな変化の中にあった時代を色濃く映し出す大会となりました。高度経済成長と万博に象徴される未来志向の空気の中で、紅白歌合戦は伝統を守りつつ、新しい音楽の流れを取り込みながら進化を続けていました。美空ひばりや森進一をはじめとする世代を代表する歌手たちが集ったこの第21回は、紅白歌合戦が次の時代へと歩みを進めていく重要な節目の一回として、今なお語り継がれています。