「世界が終るまでは…」「もっと強く抱きしめたなら」「時の扉」など、数々の名曲で90年代の音楽シーンを彩ったロックバンド「WANDS(ワンズ)」。アニメ「スラムダンク」の主題歌として使用された楽曲も多く、今なお色褪せない人気を誇ります。結成から30年以上経った今も形を変えながら活動を続けるWANDSですが、実はその歴史の中で何度かのメンバーチェンジを経験しています。本記事では、WANDSの結成からこれまでのメンバー変遷と、各期の特徴や魅力、そして現在の活動状況までを詳しく解説します。
WANDSとは
バンドの結成と初期の活動
WANDSは1991年9月、音楽プロデューサーの長戸大幸によって結成されました。ボーカルの上杉昇、ギターの柴崎浩、キーボードの大島康祐という3人組のバンドとして誕生し、同年12月4日にシングル「寂しさは秋の色」でデビューを果たします。
デビュー曲は大きなヒットには至りませんでしたが、2ndシングル「もっと強く抱きしめたなら」が1992年3月にリリースされると、オリコンチャートで最高10位を記録する大ヒットとなりました。この曲はドラマ「二十歳の約束」の主題歌に起用され、WANDSの名を一気に世間に広めることとなります。
さらに、1992年6月にリリースされた3rdシングル「時の扉」は、オリコンチャート2位を記録する大ヒットとなり、バンドの代表曲の一つとなりました。こうして結成からわずか1年足らずで、WANDSは日本の音楽シーンにおける重要なバンドとしての地位を確立していきました。
バンド名の由来と意味
バンド名「WANDS」には、いくつかの由来があると言われています。最も広く知られているのは、タロットカードの「ワンド(Wand)」に由来するという説です。タロットカードの中の「ワンド」は「幸福の杖」を意味し、幸運や発展、可能性を象徴しています。この意味合いが、新しく結成されたバンドの未来への希望を表していたのでしょう。
また、別の説としては、初期メンバーのイニシャルを取ったという説もあります。上杉昇の「U(W)」と柴崎浩の「S」を組み合わせて「WANDS」となったというものです。実際のところはどちらが正しいのか、あるいは両方の意味を込めていたのかは定かではありませんが、いずれにせよこの名前は彼らの音楽とともに多くの人々の記憶に刻まれることになりました。
各期のメンバー構成
第一期(1991年 – 1992年)
上杉昇(ボーカル)
上杉昇は1972年5月24日生まれ、血液型はA型、身長172cmのボーカリストです。WANDSのオリジナルメンバーとして、バンドの顔となる存在でした。力強く伸びのある歌声で「時の扉」や「もっと強く抱きしめたなら」など、WANDSの代表曲を歌い上げました。
上杉は元々ミュージシャンを目指していたわけではなく、バンドに誘われるまではモデルや俳優を目指していたという異色の経歴の持ち主です。しかし、その歌唱力とカリスマ性でWANDSの成功に大きく貢献しました。
柴崎浩(ギター)
柴崎浩はWANDSの初期メンバーであり、ギタリストとして活躍しました。WANDSに加入する前はスタジオミュージシャンとして活動しており、確かな演奏技術を持っていました。
柴崎のギタープレイはテクニカルでありながらも楽曲の世界観を壊さない絶妙なバランス感覚が特徴で、WANDSの楽曲の骨格を支える重要な役割を担っていました。また、作曲面でも才能を発揮し、バンドの楽曲制作に大きく貢献しました。
大島康祐(キーボード)
大島康祐は、WANDSのオリジナルキーボーディストです。加入前はLOUDNESSのサポートメンバーとして活動していたという経歴の持ち主で、高い演奏技術を有していました。
WANDSでは、繊細なピアノフレーズからダイナミックなシンセサイザーサウンドまで、幅広い音色で楽曲に彩りを添えました。しかし、音楽性の違いなどから在籍期間は短く、1992年に脱退することになります。
第二期(1992年 – 1996年)
上杉昇(ボーカル)
第一期から続投した上杉昇は、第二期WANDSでもボーカルとして活躍しました。この時期、上杉の歌唱力はさらに磨きがかかり、より深みのある歌声でWANDSの楽曲を彩りました。
特に1993年にリリースされた「世界が終るまでは…」は、バスケットボールアニメ「スラムダンク」のエンディングテーマに起用され、大ヒットを記録。この曲は上杉の力強い歌声が際立つ名曲として今も多くのファンに愛されています。
この時期の上杉は、バンドの顔としてテレビ出演も増え、知名度・人気ともにピークを迎えました。しかし、1996年後半にはバンドを脱退することになります。
柴崎浩(ギター)
第二期でも引き続きギタリストとして活躍した柴崎浩。この時期の柴崎は作曲面でもさらに才能を発揮し、「世界が終るまでは…」をはじめとする多くのヒット曲を生み出しました。
テクニカルかつメロディアスなギタープレイで、WANDSのサウンドを支え続けた柴崎ですが、上杉と同様に1996年後半にバンドを離れることになります。
木村真也(キーボード)
大島康祐の脱退後、新たにキーボーディストとして加入したのが木村真也です。WANDSの黄金期と呼ばれる時代を支えた木村は、繊細なピアノのタッチと豊かな音色で楽曲に深みを与えました。
木村は作曲面でも才能を発揮し、WANDSの楽曲制作において重要な役割を担いました。上杉と柴崎が脱退した後も、WANDSのメンバーとして活動を続けることになります。
第三期(1997年 – 2000年)
和久二郎(ボーカル)
上杉昇の脱退後、新たなボーカリストとして和久二郎が加入しました。和久はそれまでとは異なる柔らかな歌声を持ち、WANDSの音楽性に新たな一面を加えました。
和久がボーカルを務めた時期のWANDSは、それまでのロックサウンドからよりポップな方向性へと音楽性を変化させていきました。代表曲としては「WORST CRIME 〜About a rock star〜」などがあります。
杉元一生(ギター)
柴崎浩の後任として加入したのが杉元一生です。杉元は「SUGINHO(スギーノ)」という愛称でも知られ、繊細かつダイナミックなギタープレイで楽曲に新たな風を吹き込みました。
作曲面でも才能を発揮し、第三期WANDSの楽曲制作において中心的な役割を担いました。ボーカルの和久とともに、バンドの新たな方向性を模索していきました。
木村真也(キーボード)
第二期から引き続き木村真也がキーボードを担当。WANDSの唯一の原点として、バンドの音楽性の核を保ちながらも新たな挑戦に取り組みました。
木村は第三期においても作曲面で貢献し、WANDSの楽曲に独自の色彩を与え続けました。しかし、2000年にバンドは活動休止となり、木村も一時WANDSを離れることになります。
第四期(2019年)
上原大史(ボーカル)
約19年の活動休止を経て、2019年に再始動したWANDSの新ボーカリストとして上原大史が加入しました。上原は、透明感のある歌声と確かな歌唱力を持ち、WANDSの楽曲に新たな命を吹き込みました。
上原は過去のWANDSの楽曲を自分の歌声で表現しつつも、新たな楽曲でも個性を発揮。「真っ赤なLip」などの新曲では、現代的な感覚と伝統的なWANDSのサウンドを見事に融合させました。
柴崎浩(ギター)
第一期、第二期で活躍した柴崎浩が、約23年ぶりにWANDSに復帰。長いブランクを感じさせない安定したギタープレイで、バンドの再始動を支えました。
復帰後の柴崎は、WANDSの伝統を受け継ぎながらも、より現代的なサウンドへの挑戦も積極的に行っています。作曲面でも引き続き才能を発揮し、新たなWANDSの楽曲制作の中心となっています。
木村真也(キーボード)
第二期、第三期からの唯一の生き残りメンバーとして、木村真也も第四期WANDSに参加。WANDSの歴史を知る唯一のメンバーとして、バンドの音楽的アイデンティティを守りながらも新たな挑戦に取り組んでいます。
木村の繊細なキーボードプレイは、新たなメンバーと見事に調和し、現在のWANDSの音楽性を形作る重要な要素となっています。
メンバー交代の背景と理由
第一期から第二期への移行
第一期から第二期への移行の主な要因は、キーボーディスト大島康祐の脱退でした。大島は音楽性の相違から1992年にバンドを脱退。その後任として木村真也が加入し、第二期WANDSが誕生しました。
この移行は比較的スムーズに行われ、上杉昇と柴崎浩という中心メンバーが残ったことで、WANDSの音楽性や人気に大きな変化はありませんでした。むしろ、木村真也の加入により、バンドの音楽性はさらに幅広くなったと言えるでしょう。
第二期WANDSは「世界が終るまでは…」「Secret Night 〜It’s My Treat〜」「同じ月を見てた」など、数々のヒット曲を生み出し、バンドの黄金期と呼ばれる時代を築きました。
第二期から第三期への移行
第二期から第三期への移行は、WANDSにとって大きな転換点となりました。1996年後半、ボーカルの上杉昇とギターの柴崎浩がバンドを脱退。その理由については諸説ありますが、音楽性の違いやメンバー間の意見の相違が主な要因だったと言われています。
特に上杉の脱退は、ファンにとって大きな衝撃でした。上杉の特徴的な歌声はWANDSの象徴とも言える存在だったからです。その後任として和久二郎が加入し、柴崎の後任には杉元一生が選ばれました。
この大幅なメンバーチェンジにより、WANDSの音楽性も大きく変化。それまでのハードなロックサウンドから、よりポップで親しみやすい方向性へとシフトしていきました。第三期WANDSは「WORST CRIME 〜About a rock star〜」「一番長い夜」などの楽曲を発表しましたが、第二期ほどの商業的成功は収められませんでした。
第三期から第四期への移行
第三期WANDSは2000年に活動を休止し、その後約19年もの長い間、WANDSは活動していませんでした。この期間、各メンバーはソロ活動やセッションミュージシャンとしての活動を続けていました。
2019年になって突如として発表されたのが、WANDSの再始動。第二期から木村真也が残り、第一期・第二期のメンバーだった柴崎浩が復帰。さらに新たなボーカリストとして上原大史が加入するという新体制でした。
この再始動の背景には、90年代の音楽への回帰ブームや、スラムダンク人気の再燃などが影響していると考えられています。また、長い年月を経て、かつてのメンバー間の溝が埋まったことも要因の一つでしょう。
第四期WANDSは「真っ赤なLip」「カラス」などの新曲をリリースする一方で、過去の名曲も新たな解釈で演奏し、新旧のファンから支持を集めています。
まとめ
1991年の結成から30年以上が経過したWANDSは、幾度ものメンバーチェンジを経験しながらも、日本の音楽シーンに確固たる足跡を残してきました。第一期から第四期まで、各時代のWANDSはそれぞれ異なる魅力を持ちながらも、一貫して質の高い音楽を提供し続けてきました。
特に第二期WANDSの「世界が終るまでは…」「時の扉」などの名曲は、今なお多くの人々に愛され、カラオケやメディアで取り上げられる機会も多いです。また、アニメ「スラムダンク」との関わりから、アニメファンの間でも高い知名度を誇っています。
2019年に再始動した第四期WANDSは、過去の遺産を大切にしながらも、新たな挑戦を続けています。上原大史、柴崎浩、木村真也という現体制で、彼らはどのような音楽を届けてくれるのか。今後のWANDSの活動から目が離せません。
WANDSの歴史は、メンバーが入れ替わりながらも継続してきたバンドの魅力と、それぞれの時代の音楽性を映し出す鏡のようです。各時代のWANDSには、それぞれ異なる魅力があり、好みは分かれるかもしれませんが、WANDSという名前が日本の音楽史に残した功績は揺るぎないものだと言えるでしょう。
感想はこちらから